どの業界にもセクハラは存在するが、介護の現場でもセクハラは問題となっている。利用者に体を触られたり、利用者の家族に卑猥な言葉をかけられるなど内容は様々だが、一番の問題は、介護の現場でのセクハラがなかなか表面化しないということである。その大きな理由には、事業者が具体的な対策を講じない点が挙げられる。ホームヘルパーがセクハラを訴えても、認知症だから仕方がない、我慢するのも仕事のうちなどと言われ、まともに取り合ってもらえないことが多い。事業者のこのような対応には、利用者からのクレームを恐れていたり、利用者や家族との信頼関係を壊したくないという思惑もあるのだろうが、ホームヘルパーにとっては身の危険を感じることでもあるため、死活問題といえるだろう。
また、もともと介護業界ではセクハラという問題が想定されていないことも改善に向かわない理由の一つである。介護福祉士もホームヘルパーも研修を受けるが、そのカリキュラムの中にセクハラへの対応という項目は存在しない。そのため、介護の現場でセクハラを受けても対応の仕方が分からず、そのまま被害を言い出せないこともある。こうした問題に対して厚生労働省は、訪問介護の現場でのセクハラの実態調査や事業者向けの対策マニュアルの整備などを行っているが、抜本的な解決には至っていない。今後は、セクハラに関するガイドラインの作成や、利用者との契約書にガイドラインの内容を明記するといった、具体的な解決策が必要であるといえるだろう。
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