訪問介護などの現場で、介護職が利用者やその家族からセクハラ行為を受けるという問題が起きている。2018年のUAゼンセン日本介護クラフトユニオンの調査では、介護職が利用者やその家族から何らかのハラスメントを受けたのは全体の74.2%にものぼる。そのうちセクハラでは第1位が、不必要に体に触れるで51.0%、性的な冗談を繰り返すが46.7%、胸や腰をじっと見るが25.7%だった。利用者やその家族が介護職にセクハラ行為を行うのは、介護職と二人きりになったときがほとんどだ。したがって、介護職が二人以上で利用者宅を訪問すればセクハラ行為が起きにくいことから、そうした場合に人件費の助成金を支払う自治体がある。しかし介護職の不足から利用実績は非常に低くなっている。また男性の介護職が訪問すればよいという案もあるが、訪問介護を行う介護職の90.3%が女性であるため、現実的ではないだろう。
さらに介護現場を撮影、録画すれば、セクハラを働く側に抑制力が働くのではないかという考えもある。しかし、介護においては利用者の素肌をさらす機会が多いため、この案は多くの点で問題があるといえる。映像は無理でも音声のみの録音でも、セクハラ抑止の効果があるだろう。もちろん会話を録音するには利用者とその家族の同意が必要だし、録音を拒否する利用者もいるだろう。しかし、これには介護職側からの暴言を抑止する効果も得られる。不要なトラブルや離職抑制のためにも自治体あるいは事業者は、双方の会話を録音することについて、利用者とその家族に丁寧な説明と説得をする必要があるのではないだろうか。また、セクハラ行為を行ったことのある利用者やその家族のリストを事業者間で共有し、事前防止策を立てることも有効だろう。
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