「氷の回廊」 ノートブック 7
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峠のふもとの大きな岩に、タムチョスと二人で腰をおろして話をしたことを、今でもよく覚えています。
「リンシェ村に暮らしていると、この峠の向こうにはいったいどんな世界があるんだろうって、いつも思うんだ。だから、今はこうやって本を読んで、まだ見たことのない世界を想像してるのさ。僕、自動車のエンジニアになりたいんだ。だってエンジニアになれば、車に乗って、知らないところまで行けるじゃないか。ほら、あの雲が流れてる先に、きっと大きな街があるんだよね」
エンジニアになれば、いろいろなところへ出かけられる、タムチョスはそう思ったみたいです。
「エンジニア」、それが木のノート・ブックに書かれたタムチョスの夢です。
夢と希望をいっぱいにふくらませた、一二才の少年・タムチョスと同じ時を共有出来たことを、僕はとてもうれしく感じていました。
リンシェ村の夜空は、さそり座の赤い星・アンタレスに代わって、オリオンが輝き始めていました。
ハヌマラ峠の上に、雪が降ったようです。もう、冬が近づこうとしていました。
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