「氷の回廊」 ノートブック 4
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夏の間、ヤギとタムチョスといっしょに、東のハヌマラ峠の方に行ったことがあります。タムチョスは、ヤギを気にしながらも、石灰を含んだ小さな白い石をいっぱい選んでいました。
宝物でも集めてるの? と僕が聞いてみると、
「ちがうよ! 砕いて、粉にして、水を混ぜて使うんだよ。これ、インクなんだ!」
僕は、なぜだか胸が熱くなる思いがしました。タムチョスは、ガラスの小さな瓶の中に入れた泥のインクを、いつも懐の中に大切にしまっていました。凍らないようにするためでした。
学校では、壁に貼ったアルファベットの教材を使って、英語の授業をしています。居眠りをしている一年生も、教材のポスターに書かれた船や、鯨や、電話の絵に目が釘付けになっている子どもたちも、アイスクリーム、テレフォン、カー……、といった単語のほとんどを、実際に目にしたことがありません。新聞もテレビもなく、電灯すらないこの村のタムチョスたちにとって、学校で習うことが唯一、外の世界や、あこがれの街との繋がりなのです。
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