「氷の回廊」 ノートブック 2
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「お〜い、学校へ行くよ〜」
家を飛びだしたタムチョスは、隣の丘の上に住んでいる同級生に向かって叫びました。
学校までは坂道を一時間。冬になれば、滑ったり転んだりの道のりです。小さな弟や妹を背負って子守をしながら来る子、クワをかついだまの子……。村はずれに住んでいる子は、白いロバに乗って、さっそうと通って来ます。タムチョスも例にもれず、妹のユンタンといっしょです。八才のユンタンはとてもしっかり者で、母さんの手伝いもよくやっています。
「お兄ちゃんは、勉強はよく出来るけど、家の仕事はちっとも手伝ってくれないんだから……」
ユンタンは、いつかきっといいお母さんになるような気がします。
やがて、子どもたちの列は小さな沢を越え、たわわに実った麦の畑を横切り、学校に近づくにつれて長くなります。誰からともなく、村に古くから伝わる歌を口ずさむと、風が麦の香りとともに歌声を運んでゆきます。
タムチョスが通う学校は、村を見下ろす丘の上に建つ小さな学校です。日干しレンガを固めて建てた校舎は、一〇年ほど前、村の男たちが総出で造り上げました。
ヒマラヤの奥地では、それがどんなに小さく、貧しい村であろうと、学校は村の一等地にあります。かならず村を見晴らすことの出来る場所にあるのです。それは、学校は子どもたちだけのためにあるものではなく、村全体の、夢と希望に近づくためのものでもあるからです。リンシェ村にとっての学校は、孤立した生活と文化を広げるための、もう一つの回廊なのかも知れません
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